第3幕 勇者 大渕隆

第3幕 勇者 大渕隆

北海道移転後に経営改革を実行してきた日本ハムファイターズ。
その改革理念を人事・編成面において如何に具現化してきたのか、
会社員⇒高校教師⇒現職というキャリアを有する勇者から学ぶ。

1.キャリア

 大渕氏は新潟県十日町市出身。早稲田大学に進学、硬式野球部に所属して六大学野球でベストナインを獲得する。
その後、IBMに就職。ITに関わる仕事の傍らで、海外で野球を学ぶ。
退社後、高校教員を経て、日本ハムファイターズのスカウトに転身する。
2007年にスカウトディレクターに就任し、GM制度の導入やBOSの導入など、これまでの規定概念に捉われない球団改革を実施してきた。球団改革の経緯、組織・人材マネジメント及び選手の人間教育等、球団の組織改革について具体的に話していただいた。

2.組織改革~GM制度の導入~

 今では当たり前となったGM制度を定着させたのが日本ハムファイターズであった。
GM制度導入前の旧体制では、権力が横並びになってしまう、活動意義が不明確のため方針が状況によって変わってしまい短期的で断片的なチーム作りになってしまうという問題点が存在した。
GM制度を導入したことによって、球団内での権力構造が明確化して「野球とビジネス」双方の視点を持った球団運営が可能になり、活動意義を明文化して組織としての活動方針を明確にすることで長期的で横断的なチーム作りを行えるようになったのであった。

3.チーム統括~勝てる戦略、BOSの導入~

 日本ハムファイターズでは、選手の評価システムであるBOS(Baseball Operation System)を導入し、定量的な評価システムを導入している。
BOSとは選手の身体能力、技能、戦術、性格等を点数化して評価するシステムである。
BOSの導入で人材に関する評価をデータベース化することができ、監督やコーチの経験に頼らずに選手を定量的かつ客観的に評価することが可能になったのであった。
また、球団における人材マネジメントを最適化・効率化し、さらに長期計画化することも可能になり、球団内でチームマネジメントに対して共通の概念や認識を持つことが可能となった。

4.人間教育~ロールモデルとしての野球選手へ~

 日本ハムファイターズでは、プロ野球選手の社会的影響力の大きさに着目し、選手の人間教育にも着手した。
「プロ野球選手は野球をすることが仕事ではない。
野球を通じて人々の生活を豊かにすることが仕事。」という考えのもと、単なるプロ野球選手にとどまらず、社会に対して影響力のある人材を育てるための選手教育プログラムを導入した。
具体的には、2~3月のキャンプ期間に新人選手の教育を実施し、「プロ野球選手の影響力の大きさ」、「プロフェッショナルとは何か」など、ロールモデルとしてのプロ野球選手の育成を行っている。

5.質疑応答

 受講生からは組織マネジメントやBOSに関して質問が出された。
また、賢者の鈴木美伸先生からはキャリア、人材採用・活用システムに関して質問があり、プロ野球球団の特殊な人事構造と一般的な人事の比較や採用手法に関する議論が行われ、大渕氏は「野球選手は2度死ぬ。野球人生の10倍の人生がある。



講師プロフィール

■プロフィール
大渕隆
■主な経歴
(株)北海道日本ハムファイターズ スカウトディレクター