第4幕 勇者 山谷拓志

第4幕 勇者 山谷拓志

いかにして「リンク栃木」を創業し、3年で日本一を達成したのか?
会社員からの転職、現在はバスケットボール新リーグ(NBL)を創業するというキャリアを有する勇者から学ぶ。

1.キャリア

 山谷氏は東京都出身。高校・大学とアメリカンフットボール部に所属し「日本一」を目指す。大学卒業後はリクルートに就職し、選手としてアメリカンフットボールを続け「日本一」という目標を達成する。
 その後、自らがチームを運営する立場になり、スポーツビジネスの世界に身を投じる。
リンクアンドモチベーションに転職し、コンサルタントを務めたのち、リンク栃木の社長としてチームを立ち上げる。田臥勇太選手の招聘、そして日本一の組織を作り上げ、リーグ優勝に導く。
現在は、一般社団法人日本プロバスケットボールリーグ(NBL)の専務理事に就任し、プロリーグの立ち上げに奔走中である。
 スポーツビジネス双方の立場から組織づくりを経験し、熱いビジョンとミッション、そして明確な戦略・戦術を持つ山谷氏から、新たな価値を創造するマネジメントについて語っていただいた。

2.リーグビジネス

 リーグ運営をビジネスとして捉えたときに顧客は誰になるのか?リーグには様々なステイクホルダーが存在し、チームも顧客ということができる。
また、リーグ単体では商品価値を持たず、興行のためにはマッチメイクなどが必要となり、リーグは決議権を持つ会員であるチームの合議制で運営される。
 リーグ運営において、様々な権利を如何にして現金化していくかということが重要となり、権利ビジネスということができる。バスケットボールというコンテンツの価値を高めるためには、ハードとソフトが一体となることが重要となる。

3.チームマネジメント

 バスケットボール界にはリーグが2つ存在するなど、構造的・制度的な矛盾が存在し、プロスポーツと企業スポーツが混在しているのが現在の状況である。企業に依存していると、時代や社会背景の変化によってリスクが高まる可能性があるため、収入を分散させ、リスクを分散させる必要がある。
 コンテンツの主軸はスポーツであり、スポーツの本質的な価値が最も重要である。山谷氏はバスケットボールを「スポーツエンターテイメント」と捉えており、コンテンツのバリューを高めるための投資が必要であると述べていた。そのためリンク栃木時代は、演出も重要であるが、あくまでもスポーツへの投資を優先し、「日本一」という目標に向かっていた。
 また、マネジメントの考え方として、物事を確率で考え、不確実性と向き合うことが重要であるとおっしゃっていた。準備をすることで確率、可能性が高まる。確率を高めるためには何をするのか、可能性を高めるにはどうすればよいのか。結果から逆算して物事を考えることが非常に重要となる。山谷氏は、「勝つためのプロセスがあってこそ、負けても意味がある」と語ってくれた。
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4.バスケットボール界の今後

 バスケットボールには潜在的な市場が存在しているため成長産業となる可能性がある。
市場を開拓し、新たな価値を創造するためには、コンテンツホルダーである協会やリーグの構造改革が必要。自らの価値を拡大再生産し、選手も競争意識を高めるための仕組み作りが求められる。そのためには、トップリーグをプロ化し、多くのステイクホルダーに目を向け社会的価値を創造する必要性がある。

5.質問セッション

 賢者の土岐氏からは山谷氏のリーグマネジメントについて、ビジネスの観点から①ビジョン、②ミッション、③戦略、④戦術に関して、リーダーシップという観点から①ビジョン・戦術、②マネジメント、③コーチングに関してコメントを頂いた。また、NBLに関する質問もされた。
 同じく賢者の高橋先生からは、チームやリーグを運営してきた山谷氏が今後、公益財団としての協会をマネジメントする可能性に関して質問がされた。
 受講生からはチームの価値を高めるためのマネジメントや、現在のネットでの動画配信事業に関する質問、バスケットボールのプロ化やNBLに関する質問などがされ、活発な質疑が行われた。


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講師プロフィール

■プロフィール
山谷拓志
■主な経歴
一般社団法人日本バスケットボールリーグ 専務理事兼COO
前公益財団法人日本バスケットボール協会新リーグ 運営本部副本部長兼COO
株式会社リンクスポーツエンターテインメント 創業者
早稲田大学スポーツビジネス研究所 招聘研究員