望月氏は大阪府の出身。「ハンドボールを通じて、人生を学んで来い」という両親の影響を受け、高校大学とハンドボール漬けの生活を送る。大学卒業後、株式会社ルネサンスに就職。現場のトレーナーを経て、現在は取締役執行役員として、新規事業開発や人材育成などを担っている。スポーツクラブの創世記から拡大期、停滞期を経験し、これからの再拡大へと向かうスポーツクラブのビジネスモデルや事業拡大戦略、価値を創造するためのHuman Resource Management、望月氏の学生時代やトレーナー時代、そして執行役員とステップアップしてきた自身のキャリアについて熱い講義をしていただいた。

　スポーツクラブの業界全体の売り上げ規模は4,200億円程度である。ルネサンスの売り上げ規模は約380億円で世界13位に位置している。ルネサンスの基本となるビジネスモデルは、ジムやスタジオ、プールを備えた複合型スポーツクラブの運営、テニスやスイミング、ゴルフなどのスクール事業の展開、標準化されたプログラムの提供が基盤となっている。
　一駅圏内に複数のスポーツクラブが存在して飽和状態ともいわれる状況の中で、ルネサンスは積極的なM&A戦略で出店を加速させ、市場を席巻してきたが、成長を続ける秘訣について語っていただいた。

　事業を拡大していくうえで、重要となるのが「市場浸透」「新規市場開拓」「新商品開拓」「多角化」である。自社が持つハードやソフト、またどのようなリソースがあるのか。「新規市場開拓」の一部を紹介する。

「新規市場開拓」
① Demi RENAISSANCE
　ルネサンスでは、駅周辺での女性専用のヨガ、ピラティスを中心に「Demi RENAISSANCE」業態を展開。スタジオだけの業態である　が、立地やおしゃれな内装、雰囲気といった女性のニーズを的確に捉え、事業を展開している。
② 海外展開
　スイミングスクール運営の事業のノウハウを活かした海外展開。海外ではスクールのニーズはもちろんのこと、日本の水質管理技術の高　さを活かした、透明なプールのニーズが非常に高まっている。
③ シナプソロジー
　シナプソロジーとは、視覚・聴覚・触覚などの感覚器へ、さまざまな刺激を与え続けながら、動くことを通して、注意機能や判断力な　どの認知機能を高め、活動的快の心理的向上が得られるなど、脳を活性化させることを目的としたプログラム。シナプソロジーを用い　たB to B ビジネスの展開。このプログラムを自社のスポーツクラブで展開するだけではなく、企業や自治体などへとプログラムの提供　も行っている。

　マーケットシェアを拡大する上で重要となったのがHuman Resource Management(HRM)、人材育成であった。各クラブで展開されるプログラムは、トレーナー個人の力量によって、プログラムの質が変化してしまう。そのため、良い人材を採用できなくても育成できる仕組みや必須研修の義務付け、実力主義の評価制度など、「個人ではなく、組織としてプログラムの質を高め、標準化できるための仕組み」を構築した。その根幹となったのが、「ステップアップシステム」である。年1回の必須研修を義務付け、その場で技術査定を実施、さらに査定の点数を評価や報酬に連動させるシステムである。
　また、プログラム開発に関しても、個人任せにするのでなく、基本となるプログラムを本部で開発し、各クラブに配信している。このように、提供されるプログラムの質を標準化し、それに向けて人材を育成することが、結果として個人の生産性を高めるだけではなく顧客満足に繋がっている。

　賢者の渡先生からは、望月氏の「動けば変わる、動けばわかる」というコンセプトは、スポーツクラブを日本の全ての環境に広めていくこと、ソーシャルキャピタルを高めること、コンピテンシーを高めることに繋がるのではないかというコメントを頂いた。賢者の鈴木先生からは、HRMに関してルネサンスが展開するメンタル事業が企業の採用選考にも応用可能なのではないかというコメントを頂いた。
　また、受講生からは、ルネサンスの具体的なビジネスモデル、女性の社会進出、キャリア形成などに関する質問がなされ、活気のある質問セッションとなり、望月氏への質問は講義終了後も続いた。