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第7幕 勇者 山下修作第7幕 勇者 山下修作アジアのサッカー市場規模は欧州の約3%にすぎない。
Jリーグ・アジア戦略はどんな競争優位性をもつのか。会社員からの転職でアジアへの可能性を見出し戦略室創設に繋げたキャリアを有する勇者に学ぶ。 1.サッカー界の構図とこれからについて 現在、Jリーグの試合は世界121か国で放送されており、また、外国人旅行者の観光ツアーにJリーグの試合観戦が組み込まれ、世界中から観客が来ている現実が紹介された。
次に、試合会場で応援するサポーターの写真を見せながら、海外の試合を応援して泣くことは少ないがJリーグの試合を応援して一喜一憂することがある点に、Jリーグの価値があるはずだと述べられた。今後、日本が世界一になるためには、日本人の長所である技術力や勤勉さに加えて、そのような観客の「心」を資源としてワクワク感を満たしていくことが重要であると語ってくれた。 山下氏はGNW(Gross National Wakuwaku)という独自の指標を示してくれた。 2.日本サッカーの歴史 1970~80年代の日本リーグの試合ではほとんど観客がいなかったが、1993年にJリーグが10クラブでスタートし、2013年には40クラブ(30都道府県)、2014年には51クラブ(36都道府県)まで拡大し、20年間で日本全国にサッカーが根付いてきた。
一方、市場規模を見ると、Jリーグは120億円でアジアトップにいるものの、イングランドのプレミアリーグの2500億円と比較すると約20分の1しかないのが現状である。特に1200億円ほどの放送権料のうち、約800億円がアジアのお金となっている。 このような現状を打破するためにJリーグは、次の20年でアジアのマーケットを拡大することでJリーグも拡大していきたいと山下氏は語ってくれた。 特に、山下氏は日本を高度経済成長期が終わった国として捉えるのではなく、高度経済成長期の真っ只中であるアジアの一国として捉えているのが印象的であった。 3.Jリーグのアジア戦略 韓国のKリーグ、またヨーロッパの各国リーグにはないJリーグの強みとして、ASEAN諸国より弱かったこと、20年間でリーグを強くしたこと、ASEANの一員であり共に成長しようとメッセージが出せることが挙げられる。
このような強みを生かしながら、アジア全体のレベルアップを図り、それによってアジアでのJリーグのプレゼンスも高めて事業機会の創出につなげていこうとしている。 具体的には、東南アジア・東アジアを中心とする12か国に対して運営ノウハウやシステム等を提供すると同時に、放送を利用したJリーグの露出の拡大やJクラブによるASEAN各国の選手の獲得等が行われている。 また、JリーグやJクラブは、アジアに積極的な展開をすることで現地の経済界や政界と強固な関係を構築し、スポンサー企業はその関係を利用しながらビジネスを発展させている現状を具体的な事例を挙げながら説明してくれた。 このように、アジア戦略はJリーグにおいて非常に重要な位置にあるが、その遂行を担っているアジア戦略室は山下氏が2011年1月に実施した日本からカンボジアの子供たちにユニホームを送るという企画が事の始まりとなっている。 現地で着古しのユニホームに喜んでくれる子供たちを見て、この取組みに可能性を感じ、翌2012年1月にアジア戦略室を開設したのであった。 4.キャリア 山下氏は、大学時代のサッカー部2部降格や網膜剥離の経験から、3H(HEAD:頭、HEART:心・魂、HUMOR:ユーモア)と3力(発想力、信じる力、突破力)を大切にしながら、「人と違った視点でモノを捉える」ことに心掛け、「言葉は意識を変え、意識は行動を変え、行動は結果を変える」ことを意識して生活していると語ってくれた。
また、成長は戦略とスピードの掛け算(成長=戦略×スピード)で成り立つため、戦略が十分に練られていなくてもスピードでカバーするようにしているとも語ってくれた。 5.質問セッション 賢者の北川氏からは、発想のトレーニングや夢を持って走ることが重要であり、人と人との信頼関係が一貫したメッセージとして受け取ることができたとコメントを頂いた。
渡氏からは、出てきた写真は背景が良くて気を感じることができ、まさしく背景の気=「景気」を作っており、特に山下氏自身に視点がないとそのような写真は撮れないはずであるとコメントを頂いた。 また、不動産だけではなく、地域の文化的な重要な動産を作っているというコメントもあった。 高橋氏からは、Development through Sports(スポーツを通した開発)の重要性を改めて感じたとコメントを頂いた。 受講生からは、プレミアリーグ等のヨーロッパのアジア戦略に対してどのように考えるのか? 利益につながりにくい現在のアジア戦略についてトップや幹部に対する説明はどのような方法で行うのか? Jリーグの観客減少の原因をどのように考えるのか?等、様々な質問がなされた。 講師プロフィール■プロフィール
山下修作 ■主な経歴 (株) Jリーグメディアプロモーション アジア室長 (株)SEA Global取締役 |
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