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【第五幕】 三浦 卓広 スポーツとエンターテインメント第五幕 三浦 卓広 スポーツとエンターテインメント00年代以降縮小する産業市場下、
尚全盛期を上回る売上高を弾き出す経営手法とは? 文化(音楽・スポーツ)をエンターテイメントとして創出し、 感動価値創造ビジネスを展開するエイベックスに学ぶ。 【1】感動価値創造の理念の中心にある音楽!そしてスポーツ!
エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社(以下:avex)は、1988年創業、総従業員数約1,400名、売上高1,200億円の総合エンターテインメント企業である。その事業内容は大きく6つ。
・パッケージ事業 ・コンテンツ事業 ・ファンクラブ事業 ・配信事業 ・コンサート・イベント事業 ・マーチャンダイジング事業 この事業展開から見て取れるように、アーティストの権利を外に出さず、自社内でアーティストを育てることでパフォーマンスからの売り上げではなく、権利を活用して360度ビジネスを行っているのがavexの強みである。 「感動を与えるのがわれわれの仕事」と言い切る 三浦卓広氏は、avexという日本が世界に誇る音楽業界のリーディングカンパニーを率いる経営陣の一人。世の中に“感動”という価値を創出するエンタテインメントビジネスを担う社員を、どのように採用・配置・成長させるかを探求する、人事マネジメントのプロフェッショナルである。組織にとっての生命線である「人事」の舵取りをする三浦氏は、現在スポーツを通じた事業展開の立案と実施を手掛け、新たなマーケットの創出に動いている。 【2】 障がい者スポーツへの挑戦的取組み
スポーツを「最後まで勝敗が分からない究極のエンターテインメント」と位置づけるavex。
これは、avexの企業文化でしか生まれてこない発想かもしれない。スポーツ選手は、言葉や人種の壁を越え世界コンテンツになれると見定めた上で
アスリートマネジメントを手がけ、更に障がい者アスリートを積極雇用することで、障がい者スポーツの普及振興にも努めている。
音楽業界で地位を確立してきた企業が、なぜ障がい者スポーツに関わるのか?その理由は、障害者法定雇用率の遵守という法的な側面がひとつ。 そしてもうひとつは、avexが掲げる「感動価値創造企業へ」の理念にある。 障がい者スポーツは厚生労働省管轄下で「リハビリ」としか捉えられておらず、それではアスリートが自立をする土壌などできる環境にない。 2008年に田中佳子選手(アルペンスキー)を雇用したことで、海外遠征費用や練習にかかる費用、競技用具購入費なども自費で捻出し、 費用面・練習環境が非常に厳しい状況にあるという現実を選手から直接聞いた。加えて、世間の関心の薄さも障がい者アスリートは感じている。 「リハビリ」から「生きる意味そのもの」へ。 こう認識を転換させるためにはマーケットを創造するしかない。“その時”になかったマーケット(トレンド)を作ってきた確固たる実績がavexにはあり、 障がい者スポーツの世界でも「彼らが本当に自立できる場所・きっかけを新たに作っていきたい。 それが、究極のエンターテイメントであるスポーツを通じて喚起する“感動価値”に繋がっていく」と三浦氏は熱く語り、会場からは拍手が起こった。 障がい者スポーツが置かれる厳しい状況下でavexが目指すもの。それは“なでしこジャパン モデル”。 アスリートとしての活動と、その活動資金・生活費捻出のための仕事を両立させながら(長い時間をかけて)国際大会で輝かしい成績を残した。 その結果、女子サッカーは次のステージへ確実に歩みを進めている。これが、障がい者スポーツに合致することができれば、環境は大きく変わっていくと 三浦氏は考えている。「リハビリ」から「生きる意味そのもの」へ認識を変換するための支援は積極的に行い、自立への土壌構築はサポートする。言うに及ばず、 それを活かすのはその人(選手)の努力・能力次第である。 ○障害者法定雇用率の遵守を、avex独自の意味づけに昇華 ○アーティスト、タレント・俳優の才能を表現するノウハウを、障がい者アスリート育成にも活用 ○スポーツの価値で企業価値を向上させる これがavexと障がい者スポーツとの向き合い方である。 ロンドン五輪代表の内定選手である洞ノ上選手(車椅子マラソン)自らが、障がい者スポーツの置かれている状況やavexの支援などの話をしたことも重なり、今回の課題である「“障がい者スポーツの価値を高め、社会的地位を向上させていく”という成果を達成する為に、avex にはどのような施策が有効と考えられるか?」について様々な意見が意欲的に出された。 健常者・障がい者と区別せず、日本のスポーツを盛り上げその価値を向上させるためには、スポーツ業界だけではなく、avexという一見異業種に思える業界の力が有機的に繋がっていくことこそ重要なのではないだろうか。 (文責 勇者の鼓動 僧侶 宮本佳代子) 塾長通電
第5回三浦氏の講座では、感動価値創造を実現する「スポーツ×エンタテイメント」のビジネスモデルについて触れることで、エイベックス社が障害者スポーツにポジショニングしていくガイドライン、感動価値創造という揺るぎない理念の有様とその実行のためにポジショニングしてきたエンターテイメントという分野で持続発展していくために必要な姿勢を学習した。
障害者スポーツにおけるキーワードは「リハビリではなくスポーツ!!」「厚生労働省からの脱却」がひとつのテーマであった。 一方音楽で一度「文化市場」を創造してきた神髄には、「人の才能」をとことん生かし、伸ばす!!という企業風土が存在することが確認できた。 文化は「人の才能」を具現化したものであると言えるのであれば、エイベックス社はまさにこの命題に果敢に挑戦し、ひとつの成功を収めたといっても過言ではない。 同じく文化領域であるスポーツがこうした理念実現の過程の中でどう表現されていくのか?人と人の創造力を掛け合わせていくことで初めて確立されていく「エンタテイメント」領域において「スポーツで感動価値創造」を結実させていく道筋と可能性を探った。 勇者の鼓動 塾長 松田裕雄 講師プロフィール■プロフィール
三浦 卓広(みうらたかひろ) 1965年東京生まれ 1995年エイベックス・ディー・ディー(株)<現エイベックス・グループ・ホールディングス(株)>入社。 総務部人事課、総務部企画課長、会長室HRD課長を経て2003年6月執行役員人事部長就任。 その後、グループ構造改革に伴う2005年第一次人事制度改革、そして新経営体制発足による2010年第二次人事制度 改革を指揮。2010年4月より現職。 |
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