h1>【第六幕】 林田 祐樹 スポーツとコミュニティ

第六幕 林田 祐樹 スポーツとコミュニティ

スポーツが育むコミュニティとはなにか? コミュニティをマーケットへ、アマチュアをプロフェッショナルへ変換し、市場と雇用の創造に成功した DASの「非営利法人と営利法人」のダブルビジネス・マネジメントに学ぶ

【1】 地域資源を最大限に活性化する装置としての法人化!

 1998年10月、地域のダンスサークルを指導していた筑波大学舞踏研究室の生徒と卒業生4名が、文化としてのダンスの発展を目的に 特定非営利活動法人Dance Association Seeds(以下:NDAS)を設立した。その後、同組織を法人化した有限会社DASが2004年に立ち上がった。 ダンスで価値を創造し、雇用を生み出したNPO法人DASの理事長であり、(有)DASの代表取締役社長が今回の勇者、林田氏である。

 NDASが設立された当時、会員数は増加の一途を辿った。その要因は以下5つに集約されると林田氏は分析する。
・熱意と行動力
・少数精鋭
・バックボーンが共通していて意思疎通が容易
・筑波大学のブランド力
・つくば の教育熱心な土地柄


つまり、同じバックボーンを持ったスタッフが共通した目的意識を持ち、その目的と地域のニーズに沿った行動が伴うことで、地域に根付き、会員が増加するに至ったといえる。 重要なことは「自分たちがしたいことをする」ではなく、「その時何を求められているか把握し、そこにある欲求を解消するために行動を起こす」ことにある。

一方、会員数が増えて事業が多様化してくると、NPO法人として行うべきものではない事業が出てきた。林田氏は有限会社の設立動機がそこにあるという。NPO法人は利益を出すことが目的ではなく、使命を達成することが目的である。つまり、使命を達成すると存在価値がなくなる。地域における文化としてのダンスの発展を目指すことを使命に掲げているNDASには出来ることが制限されるというのである。


【2】 非営利法人と営利法人のダブルスタンダードの功罪とは・・・

  <そこで、今回の課題1つ目。「地域におけるB to Cの普及育成型スポーツビジネスで、営利法人と非営利法人の両方法人格を持つことのメリット、デメリットとは」についてグループワークを行った。

<メリット> ・非営利法人として公的な施設の利用ができる。補助金が獲得しやすい。
・営利法人で計画する事業のトライアルが非営利法人として実行可能になる。
・事業性と社会貢献性の両方を兼ね備えている。
・非営利法人では特定の活動を目的に設立させたものなので行動が制限(制約)させるが、それを補う形で法人格がフォローできる。

<デメリット>
・実態が見えにくいために、しばしば疑わしく思われる
・お金の流れが不明瞭になりがち。

 これらのメリット、デメリットを踏まえて林田氏が示したNDAS役割とは、非営利しかできないことに特化(安価に使用できる公共施設を用いて様々な団体との連携による地域コミュニティの活性化)する。一方の?DASの役割は、営利法人にしかできないことに特化(新たな事業の創造と拡大、雇用の広がりなど)する。この両輪を持ちながら運営することで、自立した継続可能な活動をし、ダンスの価値を更に高めることができる。


【3】 DAS 今後のビジョン

 しかしながら現在抱える課題はそれぞれにあり、DASではリスクの分散と正社員の高齢化への対応。NDASでは地域内で飽和状態に達するスクール事業への対応がそれに当たる。そこで、本講座課題の2つ目には、「これらの課題を『地域における文化としてのダンスの発展』というミッションを達成する中で解消していくにはどのようなビジネスアイディアが考えられるか?」というものが出された。
シニアを対象としたダンス公演、異文化交流や語学とダンスを掛け合わせたビジネス、練習の場として提供するダンスボックス(カラオケボックスのダンス版)の経営、など受講者から多数の意見が出され、林田氏もそれぞれに感想を述べながら事業への可能性を探った。

 NDASの展望、それは、ダンスに関わる人々と手を組み、ダンスの振興を更に進めていくことであった。具体的には、地域のダンスクラブとの連携促進を図るため、積極的に持っている資源を地域のダンスクラブに解放し協働する場を作っていくこと、更に、学校の先生や地域のダンス指導者の育成プログラムを提供することが挙げられた。つまり、今までBtoCだったものがBtoBの領域にも広がりを持つことを意味する。無論、ダンスと身近に接する機会がない層にアプローチし、更に地域にダンスを根付かせるというB to Cの活動も継続する。

 (有)DASは、会社名を有限会社D-Lifeに2012年4月1日に変更。名称の変更には、NDAS、つまり非営利組織と異なる名称にすることで疑わしさを軽減する目的もあるが、第一義には、(有)DASが次のステップに進むという強いメッセージを発信することにある。真のダンスの価値を追及していき、ダンスによって人々の生活に3つのD(Dance・Dream・Drama)を提供することを目標に進化していく。
(文責 勇者の鼓動 僧侶 宮本佳代子)

塾長通電

 林田氏の講座は、これまでのB to Bモデルと打って変わり、貴重な「B to C」!のモデルでした。  指導やレッスンをコンテンツとしたビジネスは、ことスポーツに於いては最も市場価値が低く見積もられ、厳しい  (過去から根付くボランティアクラブ、教室の流れ)状況の中、DASのモデルは地域の特性をよく理解し、  その土壌に合った仕組みを丁寧に作り上げることで成功しているよき事例でした。
 まとめれば、もともとスポーツで創られてきたコミュニティに、林田氏というヒト、地域に根付く潜在的な理解・賛同・ニーズ、「NPO」という法人定款、  3つが介在することによって、コミュニティがマーケットに進化していったといった感じでした。  国内にはスポーツで創られたコミュニティは多々あると思いますが、そこをうまく掘り起こしていけば、これをマーケットにも切り替えていくことが出来ることを証明してくれました。
 スポーツの価値のひとつには、 コミュニティの作り易さというものがあります。私はこの価値が実は教育的・社会的・健康的価値に続く  21世紀の産業化に向けた大きなカギであると思っています。なんといっても21世紀はマネジメント3.0の時代、「ヒトの活性化」と「繋がり」の時代ですので・・・。

勇者の鼓動 塾長 松田裕雄


講師プロフィール

■プロフィール
林田 祐樹(はやしだ ゆうき)
1978年10月15日生まれ
鹿児島県種子島出身

2002年3月 筑波大学体育専門学群 卒業
2002年4月 Dance Association Seeds代表に就任
2004年4月 特定非営利活動法人Dance Association Seeds設立
2006年2月 有限会社DAS設立