浪漫の虎 【半田裕賞】

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大学スポーツビジネスの可能性

中村仁

 スポーツビジネス先進国であるアメリカでは大学スポーツがビジネスとして確立されており、その市場規模はMLB(70億ドル)をも上回ると言われている。当然日本国内において同様のビジネスチャンスを狙う者、そしてその市場に期待する者は多数存在する。にもかかわらず日本において大学スポーツ産業が発展していない状態については原因を探る必要があり、またそのことが新たな産業の可能性を探るスタートラインになると言えるだろう。

 そもそもスポーツが成り立って来た歴史がアメリカとは異なることや、大学という教育研究現場においてはスポーツビジネス事業の理解が得られにくいことなどから、大学スポーツ産業の中心に座すべき大学自体にこれを推進していく機能が伴っていない現状がある。
 もう一つは、学生スポーツが最大価値化されておらず地域や社会に文化として根付いていないことが原因としてあげられる。学生スポーツがより文化として根付き、大衆の価値の対象となれてこそ初めて、チケット収入、グッズ販売収入、スポンサー収入、或いはTV放映権収入といったビジネスが展開されることになる。

 従って大学は学生スポーツを経営資源として捉えた諸活動を展開する組織を有することが必要である。これは展開する事業の性格から大学本体とは財政的に独立した組織であるほうが望ましいかもしれない。そして学生スポーツに対しては今までのように競技実績追求のアプローチだけではなく、学生アスリートの人格育成およびボランティア等社会貢献活動を直接的に支援することや、学生スポーツと一般学生、或いは学生スポーツと地域住民との交流を促進するイベントを通してスポーツの魅力を根付かせるなどして地道に総体的に価値の向上を目指していくことが必要である。

 本講座を通してスポーツにはさまざまな価値があることを学んできたが、大学スポーツの発展はアスリートの人格形成に資する教育的価値と、そしてなにより大学を中心とした地域コミュニティの活性化に大きく寄与することになる。地域がスポーツを応援する―この構図が更に多くの潜在的なビジネスチャンスを誘発することは自明である。

 アメリカのUCLAのような街の雰囲気のなか、学生も地域住民も入り混じってスタジアムへ向かい、またイギリスのフットボールように地元のPUBでビールを飲みながらTV観戦をし、街全体がおらがチームを応援する光景を、いつか日本で見てみたい。